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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 十四章 2

翌日、僕がグリンローザ支部から道を使って本部に赴いた時には、既に支部長から粗方の事情は伝わっており、対策本部が設置され、魔術師の緊急招集の手配に入っていた。
僕は今回の事の詳細を報告した後、自らも調査に参加すべく、情報の洗い出しの為に、資料室の一室に篭った。


「アライアス、随分と大掛かりに動いているようだが?」
「フロイト殿」
一人の幹部が、小さく丸い鼻眼鏡を押し上げて、僕を見上げて話しかけてきた。

――――ステファン・フロイト。
彼は、魔術師協会の最高幹部の一人である。

身長は僕の膝丈程度しかない幼児のような見た目をしているが、彼はポロックル族という小人族なので、これでも成人している。
ポロックル族は人の倍の寿命を持ち、幼児から老人まであまり見た目が変わらない種族だ。
潜在的な魔力も強く、多くの有名な魔術師を排出してきた種で、フロイトも現在、「瑪瑙の参議」という、極めて重要な立場にある。

魔術師協会は、八人の長老と六人の参議を合わせた十四人を「最高幹部」と定めており、協会本部は彼らの手によって運営されている。
魔力が溜まる土地に建てられた八つの「理力の塔」を管理するのが長老であり、険しい山脈の中腹にある協会総本部、「水晶宮」を管理するのが参議の仕事だ。

僕のように、「賢者」の称号を持つ者は、最高位の力を持つと認められた者で、協会が「これだけの戦力を有している」と他者に示す、わかりやすい権威の象徴でもある。
当然賢者にもそれなりの権限はあるが、立場的には最高幹部に従わなければならないのは変わりない。

「君、協会内部に裏切り者や内通者がいるとは、考えてないのかね?」
「随分と物騒な発言をされる。最高幹部の身でありながら、フロイト殿は身内を信じておられないので?」
僕は眉を顰めて、不穏な発言をする幹部を見据える。
これから協会が一丸となって敵を洗い出すという時に、外敵ではなく内敵の存在を仄めかすとは。
まるで、内部に裏切り者がいるのを前提にしたような話し振りは問題だ。最高幹部がこのような発言をしているのを聞かれれば、協会全体の結束を揺るがしかねない。

(確たる証拠があるならともかく、憶測の段階で口にすべきものではないだろう)
僕が眉を顰めたのを面白そうに眺めて、フロイトは嫌な含み笑いを洩らした。

「くっくっく。不穏な種というのは、えてして足下にこそ燻っているものなのだよ。ここまで事を公にしてしまっては、よからぬ考えを持つ輩が出るやもしれない。精々、足を引っ張られないようにする事だね」
「ご心配なく。目先のものに惑わされ、魔術師の本分を忘れた輩に容赦するつもりはありません」
「では、金緑石の賢者のお手並み、とくと拝見させてもらおうか」
フロイトは幼児のような柔らかな頬に、まるで似合わない悪辣な笑みを浮かべる。僕はそれに、内心で苛立ちを覚える。
(まったく、僕のやり方を傍観している場合か!?)

今回の件が、魔術師全体にとって極めて重要であるとわかっていないはずがないのに、傍観の構えを見せる幹部を、僕は無言で睨んだ。

「若いな、アライアス。そう怒るな。こういう大掛かりな調べ物は、まずは若者に任せ、年寄りはしばし遅れて参戦するくらいでちょうど良いのだよ。とりあえず君には、「裁きの手」を一組つけるから、調査に同行させてくれたまえ」
「裁きの手を?」

その申し出に、僕は思わず聞き返していた。

「執行人」は長老直属の部隊を、「断罪者」は参議直属の部隊を指す。
彼らは常に「執行人と断罪者」という組み合わせで世界各地に散らばり、罪を犯した魔術師や、資格を持たずに力を乱用する堕術師の監視や断罪を行う。……それらを総称して「裁きの手」と呼ぶのだ。
彼らは最高幹部より独自の権限を与えられており、場合によっては、現場で罪人を殺す権限も持っている。確かに今回の件が魔術師によって行われているものならば、彼らが仕事に携わるのは不思議ではないが……。
幹部直属部隊をわざわざこの僕につける意図は、本当に調査だけが目的か?

「つまり、この私の監視ですか」
「おや、アライアスは随分と捻くれた思考回路をしている。ただの親切心とは受け取ってくれないのかね?」
「先程の話の直後にその申し出では、そう受け取れと言っているようなものでは?」
「ボクはこれでも、君の事を信頼しているのだがね? 君の生真面目さは、よく知っているつもりだからね。……だがまあ、ボク以外の幹部の意向は知らないが」

二時間後には彼らをこの部屋に寄越させると言い置いて、フロイトは飄々とした様子で去って行った。

(敵が、どこにいるのか――――、か)
先程までは外敵にばかり目を向けていたが、案外、内敵の方が厄介かもしれない。最高幹部の油断ならない物言いに、僕は深い溜息をついた。



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コメントお返事:8月12日分

9:53 頑張れ師匠!!師匠がどうにか問題を解決してくれないとシズヴィッドが鳥姫に八つ当たりされそうだ(笑)それともお姫さまだからそんなことはしないかな?くくく、ははははは!
確かにその笑い方で笑われると、思わず笑いたくなります! なにかの伝染? アルフォンソ菌?
スノウは今、結構危うい立場にいるはずなのに、本人は修行できるのを喜んでます。師匠が本人の知らぬところで気苦労を背負い込んでそうですね。師匠、頑張れ!
鳥の姫はまだ出たばかりなので、今後、何をするしないは、本編の内容によって変わってくると思います。そういう意味でも、やはり師匠の頑張りに期待したいところです。


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「明日、花が咲くように」 十四章 1

十四章 『出発前』




(明日は、協会本部か)
僕は疲れた体をベッドに横たえた。

昼間、精獣の楽園ラエルシードから、一人でセルフィーダへと戻ってきてから、精獣問題の対策に、かつての師匠でもある宮廷魔術師長ギーレンに、魔術師協会のグリンローザ支部の支部長にと、慌しく面会してきたところだ。


戻ってすぐ、執事のカリクに、シズヴィッドの家に行って、家族に事情を説明してくるよう頼んでおいた。
そして、しばらく戻れない姉の代わりに、明日から毎日、腕利きの医者を通わせる手配もさせた。

界と界を行き来する際、体に残る負担は大きい。
ラエルシードで修行をするとなれば、昼間だけ修行して夜には帰ってくるというようなやり方は、到底無理だ。
病弱な弟を心配するシズヴィッドに、「医者の手配はする。滅多にない機会だから修行に打ち込め」と勧めたのは僕だ。金はこちらで負担するから気にするなと言い包めてきた。
シズヴィッドは僕に金を使わせる事に恐縮していたが、そもそも、僕がもっと有効な力の使い方を教えられていたならば、今回の件は起きなかったのだ。
だから、師匠としてそれくらいはさせろと、強引に命令した。

修行の為にラエルシードに残ったシズヴィッドには、僕が使役する複数の精獣の中から、三羽の兄弟烏の一羽を残してきた。
三羽烏は界を隔てても常に兄弟と交信できるので、連絡役には非常に重宝する。

ラエルシードは人の身には危険な世界であり、本来ならば見習い一人を置いてくるなど言語道断なのだが、今回ばかりは例外だ。
鳥の王の娘である強大な存在が、責任をもってあれを守り導くのならば、他の精獣が害をなす事もないだろう。

鳥の姫が信頼できるかどうかは半ば疑問だが……。
例え向こうが、今回の件が片付くまでの人質というつもりでシズヴィッドを預かったのだとしても、シズヴィッドの将来の為には、賭けてみたい可能性だった。

単なる召喚術の試みが、極めて重大な問題に摩り替わった。シズヴィッドはよほど、数奇な運でも持っているのかもしれない。
だが、それもひとつの才能だ。それらすべてを最大限に利用して、強くなればいい。

できれば傍で修行を見守れれば良いのだが、今回の件はどうしても片付けなければならないものだ。
僕も、「賢者」の称号を持つ魔術師の一人として、傍観だけでは済まされない立場にある。こうして関わりを持ったからには尚更だ。
この問題が解決されなければ、いずれ、精獣が契約によって魔術師の使役となる召喚術の土台そのものが崩れかねない。


問題がグリンローザ国内のみで起きているならまだ絞り込みようはあったが、ラエルシードの始まりの森は、こちらの世界のどこにでも繋がっている、いわば「世界の入り口」だ。
始まりの森から精獣が消えているといっても、それが一体、こちらの世界のどこの誰が何をしてそうなったのかは、見当もつかない。
僕一人の手には負えない。だからこそ、協会本部に事情を報告して、世界規模で対策を練らなければならないのだ。

(できればすぐにでも本部に報告に行きたかったが、一日に何度も異界を渡るのは禁止されているからな)

魔術師協会の本部と、世界各地に散らばる支部との間は、魔術によって「道」が固定されている。その道を通れば地図上でどんなに遠い土地からでも、一瞬で行き来できるようになっているのだ。
ただ、その道は誰でも通れる訳ではない。中級以上の魔術師でなければ、使えない決まりとなっている。

その理由は、界と界を渡るには体の負担が大きいからだ。
ラエルシードに逆召喚された際、シズヴィッドがその衝撃で気絶したように、魔力の低い者では空間移動に耐えられない。また、魔力の強い者でも、一日に一度しか、道を使ってはならないとされている。
僕は今日、ラエルシードに行って帰ってきたばかりだから、それ以上、連続して空間を移動する訳にはいかなかった。


その分、明日からは本格的に動く。
この問題が片付くまでは、忙しくなりそうだ。



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