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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 十三章 6

「さて、親鳥はこれより原因の調査に入ろうが、雛はしばし、妾の元で修行せんかえ? 妾もしばらくこの森にて事の経過を見守るつもり故、そのついでにの」
「え?」

精獣が頻繁にいなくなる場所や、いなくなった種類や、その状況など一通り、姫が知る情報を教えてもらったところで、姫が私に向かってこう切り出した。

「どういう事で?」
師匠がやや厳しい表情で姫を見据える。

「なに、勘違いで雛を呼び寄せた詫びに、呼吸の仕方でも教えようと思うてな」
ほほほ、と姫が優雅に笑う。
人の姿をしていなくても、「姫」と呼ぶのにまったく違和感を感じさせない程、彼女は本当に気品があり、煌めく真紅の双眸は深い叡智を湛えているふうに見える。

「呼吸、ですか?」
そういえば、今は結界のおかげで呼吸が楽になっているけれど、本来なら私一人では、このラエルシードでは呼吸が儘ならないのだ。
もしかして、その極意でも教えてもらえるのだろうか?

「そうじゃ。呼吸によって魔力を外から自然と取り入れ、体内を循環させる方法は、魔術師となる者には非常に有益ぞ。これは垓界のみならず、惺界においても同じ事が言えるからの。正しい呼吸法を会得すれば、今の何倍もの時間、魔力を持続させられよう。それにその不器用さも、多少は矯正されるやもしれん」
「!! そんな事が可能なのですか!?」

思わぬ申し出に私は驚いた。それが本当なら、呼吸法を覚えれば、今よりずっと魔力の扱いが巧くなれるのか。
まるで夢のような話だ。

「人は自然との融和を忘れ、己の身一つに宿る僅かな魔力を搾り術を使うが、そのような効率の悪いやり方ではいかん。ここはおぬしらが住む惺界よりも魔力満ち溢れる世界。ここならば常に呼吸に気を配らねばならぬ故、訓練には絶好の場所なのじゃ。妾がここで呼吸法を体得させてやろうぞ」
「っ!!」
姫の説明を理解して、期待に胸が高鳴る。
ずっと燻っていたところに、一筋の光明が差したようだ。
(やってみたい、習いたい!)
私は強く思った。

けれど同時に、師匠が言った「油断するな」という台詞も思いだす。
この鳥の姫に悪意があるようには見えないけれど、師匠に迷惑が掛かってはいけない。
すぐにでも申し出を受けたかったが、やはり師匠の意見を尊重すべきだ。それにこれから師匠が調査する件で、私にも何か手伝える事があるなら、そちらを優先すべきかもしれない。非常事態だし、私は師匠の助手なのだから。
逸る気持ちを抑えて、背後に立つ師匠を振り返る。

「師匠、どうでしょうか?」
「おまえはやりたいんだな」
さらっと内心を読まれた。師匠は私が新しい技術を覚えたいと渇望しているのを、良く知っている。
「はい。師匠が許可してくださるならぜひ。ですが、師匠が反対なさるなら、それに従います」
慎重に答える。
修行を断る必要があるなら、それはそれで仕方ない。
本当は、とても心惹かれる申し出で、私個人では受けたい気持ちは山々だけれど、師匠の決断には従うつもりだ。私が今師事しているのは彼だ。師匠の反対を押し切ってまで、勝手な真似はできない。

強さを求めて暴走しそうな誘惑を、師匠への信頼で辛うじて留める。
そうしていると、自分の中の焦りが、自覚していたよりずっと大きく育っていたのを思い知った。
師匠の返答を待つ間も、期待と不安に胸が焦がれる。


「姫、その修行法は、一歩間違えば弟子の命に係わるもの。本来ならばラエルシードにて修行をするなど、高位の魔術師にも考えられぬ危険を孕むもの。……これの身の安全を保障すると、姫を信頼させていただいてよろしいか?」
「無論」
「……では、弟子をよろしく頼みます」
(っ!!)
師匠が姫に、丁寧に頭を下げた。姫の申し出を受けてくれたのだ!


「よ、よろしくお願いします!!」
私も慌てて、勢い良く頭を下げた。



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