五章 『貧乏貴族の安息日』今日は、週に一度の安息日だ。
私は毎日、体を鈍らせない為に朝稽古をつけている。
今日も空が明るみ始める頃に起き出して、庭の片隅で格闘技の型を確認したり、基礎トレーニングをしたりして汗を流した。
いつもならその後、お風呂場で汗や汚れを落とし、お父様の作った朝食をいただいて師匠のお屋敷へ馬で出勤するのだけど、今日はお休みの日だ。
デヴィッド師匠とクラフト師匠の元にいた時は、魔術や武術を磨くのに必死で、時間がほんの僅かでも惜しくて、安息日も出勤していた。
だが、アイリーシャ師匠とヒース師匠は、安息日には休むようにと言う。
(そう言う本人は、研究に没頭してばかりなのに)
今の師匠であるヒースは、休日でも研究に没頭している。私が休日明けに出勤すると、明らかに研究資料などの散らかり具合が違っているから、訊かなくてもわかるのだ。
師匠がそうなら弟子の私だって、掃除なり何なりできる事をしに出勤すると言ったのだが、「安息日の意味をわかっているのか?」と、あっさり断られてしまった。
そう言う本人だって、ろくに休んでいなさそうなのに。
師匠は自分で天才と言うだけあって、研究分野が多岐に渡っているし、魔術師としての仕事の依頼も多くて、とても多忙な人なのはわかる。
けれど、日々が魔術漬け、研究漬けで、見ているこちらが心配になってくるような生活を送っている。
女嫌いだけあって、異性の影など微塵も見当たらないし。
私も人の事は言えないが、何が楽しくて人生送っているのかと不思議に思うような暮らしなのだ。
だが、せっかく師匠が休んでいろと言ってくれているのだ。出勤しないならしないで、やりたい事はたくさんある。
師匠に言ったら怒られそうだが、貧乏人には安息日などないのだ。
私は朝稽古を終えてから、鶏小屋の掃除をして産みたての卵を回収する。
卵は貴重なタンパク源だ。栄養満点でおいしいから、日々の食卓には欠かせない。
朝食の準備をしているお父様に、まだ温かい新鮮な卵を渡してくる。
それから、こじんまりとした庭で自家栽培している野菜や薬草たちに水をあげた。
野菜も食卓に欠かせない大切な栄養源だし、薬草は病弱なルルに必要なもの。どちらも大切だから、お父様が毎日しっかり手入れしてくれている。
滑車を取り付けた井戸の底から、桶で何度も水を汲み上げて運ぶ。
水道はあるけれど、そちらの水は有料だから、必要最低限以外は使わないようにしているのだ。
(前の工事でうちの井戸が潰されなくて良かった)
桶いっぱいの水をくみ上げて運ぶのは大変だけど、家計の節約には変えられないので、いつもは肉体労働に適さないお父様が一生懸命、桶で水をあげているのだ。休日くらい私が代わって差し上げないと。
私は力仕事が得意だ。こじんまりした庭だから、庭全体に水をあげるくらい、私にとっては大した労働じゃない。
普段から鍛えているだけあって、私は余分な脂肪などは一切ついていない。そのかわり、柔軟な筋肉がついている。
筋肉はつけすぎて重くなっても、身軽に動けなくなる。素早さを最優先する私は、しなやかながらも重くなりすぎない、最適な状態を保つ必要があるのだ。
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楽しく読ませていただきました。
今後のスノウちゃんと、お師匠様の成長と恋愛模様が気になります。
どうなるのか非常に続きが楽しみです。がんばってください。
さて、お話には関係ない所で一点だけ気になる事があるので、
無礼は承知でお願いしたい事があります。
別のページに移るときに別窓が開く仕様を変更していただく事は出来ないでしょうか?
今回、初めて「明日、花が咲くように」を読ませていただくにあたり、
一話目から読み進めていくとウィンドウだらけになってしまいました。
せめて、1章ずつぐらいにまとめる事は出来ないでしょうか?
当方、ブログなどの知識は何もないので無理を申し上げている場合は捨て置きください。
それでは長くなってしまいましたが、今後の御活躍を祈念して挨拶に代えさせていただきます。