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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「誰も知らず」

残り三年しか生きられない人を、残りの寿命が五年ある人が、己が命を引き換えにして助けるとする。
そうなると、二年分の命が無駄になる。

そんなふうに簡単に物事を割り切れないのが、人の世の常である。
時に一人の為に千の命が奪われ、時に千の命の為に百の命が犠牲にされる。人の世は常に理不尽で満ち満ちている。

本能に従う動物ならば、弱肉強食の掟で、命の無駄は出さないか。
あるいは彼らであっても、そこまでの整合性は求めていないか。

強き者が弱き者を虐げ、搾取する。
それは人も他の生物も同じであろうに、人のそれだけはどこか歪だ。
それは複雑な思考回路を持ちすぎた代償か。
もしくは、果てのない欲望を抱く性質故か。

人類の進化は、自然という枠から大きく外れて突き進んでいる。
故に人という種はこの星の奇形児であり、いずれこの星を滅ぼす原因となるだろう。

破滅の未来は容易に思い浮かぶも、それを回避する確実な術を、未だ、誰も知らずにいる。


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「人間失格」

「この中で、一緒にいて楽しいと思える人はどれだけいますか?」

教室で、授業の時間に、クラスメイトの前でそれを問うこの教師は、なんと無神経なのかと思った。
(「誰といても楽しいです」とか、「皆といると楽しいです」とか、そんな優等生的な答えを当たり前のものとして期待しているのなら、それを訊く相手を間違っている。質問相手が不適格である事に気づいていないならば、生徒を個々としてきちんと見ていない、私の個性や内心にまるで気づいていないという事であり、教師として失格だ)

「一人もいません」
私の即答に周囲は静まり返る。
凍えた空気に、教師がようやく自分の質問が拙かったと、慌てる。
遅い。遅すぎる。


「で、では、学校で楽しいと思える時間はいつですか?」
「楽しいと思った事がありません」
これも、即答。
楽しいと思える時間など微塵もない。学校は私にとって拷問部屋と等しい空間である。
不和。私とクラスメイトを取り巻く軋轢に、気づきもせずに暢気にこんな質問をする教師こそが無知なのだ。
何か不穏なものを感じてそれを問おうとしたのならば、せめて一対一の部屋を用意すべきだった。このようにクラスメイトが揃う空間でそれを問う事の無意味さと愚かさを知ればいい。

「どうして、そんな悲しい事を言うのですか?」

「どうして?」
く、と唇が不恰好な笑みの形に歪められた。
そちらは教師として失格だが、私は人間として失格だ。この空間に馴染めない。馴染もうとすら思えない。
集団で一人を弾こうとする厭らしさも、それをにやにやと嘲笑う腐った傍観者も、何もかも気持ち悪い。
私はここにいたくない。

この教師は、どうしてそんな簡単な事がわからないのか。
物分りの悪さに絶望する。


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「存在証明」

自分が生きてきた証に、形ある物を残したい。
形ないこころを残せるなら、もしかしたらその方が、真の価値があるのかもしれない。
けれど目に見えないこころを確かに受け継いでもらうのは、きっと、とても難しいから。

だからせめて、形のある何かを残したい。
……例えそれが、幾千、幾万もの内の、ありふれた物のひとつでしかなくても。



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