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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 六章 1

六章 『石の財務長官』




「融通の利かんケチ男が! おまえにはもう頼まん!」
うざい死ね。言っておくが、他から出費を捻りだせると思うなよ、この馬鹿者が」
「おまえは弟のクセに生意気すぎるぞ!」
「ふん。愚かな兄を持ったおかげで、僕は苦労してばかりだ」
「その生意気な口を閉じろ! エクスカイル!」
「仕事の邪魔だ。用事が済んだならさっさと退席しろ」
「この石頭が!」

怒鳴り散らした挙句に扉を乱暴に蹴破って、このグリンローザ王国の第一王子ジークフリードが走り去った。
部屋にようやく静寂が戻る。

僕は書類に向き合っていつもの作業を再開する。
補佐の不吉眼が、開け放たれたままの扉へと近づいていって、ノブに手をかけたところで動きを止めた。

「なんだ。何故さっさと閉めん」
「蝶番が壊れてる」
「死ね、あの腐れ男」

僕は舌打ちする。これでまた、予定外の費用が出るではないか。
あの男、許すまじ。

「仮にも兄上に対して、その言い様はどうかと思うけど」
「うるさい不吉眼」
「それは申し訳ありません、長官」

言葉だけは謝っているものの、誠意が感じられない。慇懃無礼というやつだ。僕が睨みつけると、不吉眼は無言で肩を竦めて自分の机に戻った。
飄々とした態度だ。僕の険のある視線にまったく動じていない。まあそうでもなければ、この僕の補佐など務まるはずもないが。


そういえば、兄弟というならば、先程の馬鹿もだが、この目の前のエディアローズもそうだ。
どちらも不本意な愚兄であるとはいえ、一応は「兄」である。
「馬鹿」と「不吉」。どちらも非常に不名誉な存在で、僕はこいつらを兄と呼ぶのも嫌だが。

もっとも、こいつらだけでなく、僕の兄弟は僕以外、皆揃って「無能」か「変人」といった不名誉だらけだ。嘆かわしい事この上ない。
我が王家の血筋は妙なのが多くて、まったく嫌になる。

「孤児院の遊具だと? ふん、そんなものの為に、国庫に負担を求めるとは嘆かわしい。あの馬鹿が第一王子だと思うと、我が国の行く末が不安になるわ」

僕は眉間の皺を寄せて、書類を睨む。
無駄遣いする馬鹿どもが全員死ねばいいのに。国民の血税を何だと思っているのだ。



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「明日、花が咲くように」 七章 2

「精霊たちを引き剥がす理由を聞かせてくれるかい?」

僕は落ち着く為に紅茶のカップを傾けて、喉を湿らせる。
この師弟が精霊を追い払い、僕に危害を加えようとしているなんて可能性は、考える必要がない。僕はこれでも、ヒースを友人として信頼しているから。

それでも理由に納得いかなければ、実行されるのに抵抗が残る。
僕は、彼らがまるで「居ない」状態を、多分これまで一度も知らない。


「今回の実験の目的は、精霊と色違いの瞳に、何らかの関連性があるのかどうかを調べる事にあります。
精霊はその性質上、特定の何かを守ろうと動く事はあっても、必要以上に命を傷つける事は好みません。ましてや、守る対象にとって大切な存在を傷つけるなんて、常識ではありえません。仮に伝承が真実であったとしても、その原因が精霊にあるとは考えにくいのです」

それは僕も同感だったので、スノウ嬢の説明に黙って頷く。
ずっと身近で守られてきたからこそ、僕は彼らの優しさを、誰よりも知っている。不幸を招く原因が彼らにあるなんて、到底思えない。

「では、『不幸を招く』と伝えられてきた原因は、一体どこにあるのか?
精霊が原因とは思いにくい。……ならば精霊が原因ではないと仮定してみる。すると、今度は何故、おまえの周りにばかり精霊が異常に集まってくるのかが疑問になる。
他にもその瞳を持つ者がいれば比較検証ができるのだが、生憎とそういった情報は入ってきていない」

淡々とした口調でヒースが続ける。
彼の言う通り、少なくとも国内には、僕以外に色違いの瞳の持ち主がいるという情報はない。
そして国外でも、今のところ、そういった話は聞かない。

生まれてはいるのかもしれないが、伝承を怖れた親によって内密に捨てられてしまっていて、表沙汰になっていないのだろう。
そう考えると、この瞳を持ちながらこうして生きていられるだけで、僕は充分幸運だ。


「何事も、書物で調べるばかりでは限度があります。そこで私たちは、他に比較できる対象がいない以上は、殿下からありとあらゆる実験に協力していただいて、詳細なデータを取るしかないという結論に至りました」
「……そうなんだ」

悪びれのない笑顔で言い切られ、僕は苦笑するしかなかった。
データの為なら極寒にでも灼熱にでも行ってこいとでも言いたげな、クールで素敵な微笑みは、ある意味ヒースの無表情よりタチが悪い。
スノウ嬢は、思った以上につわもののようだ。

「詳細なデータを取る為には、いつもと違う状況を作り出す必要がある。その一環として、いつもおまえの周囲に群がっているのが当然となっている精霊たちを引き剥がした状態のデータを取ってみたいという話になった。
……これで納得がいったか?」

ヒースに問われ、「とりあえず、理由には納得した」と返す。
こうして実際に僕に話を切り出す前に、彼らだけで何度も議論を交わしていたのだろう。二人の説明は明確でよどみなかった。


それにしても、僕を見る二人の視線が徐々に、実験対象に向ける研究者のそれにすり替わってきているような気がするんだけど、これはどうしたものだろう。
ヒースが研究にのめり込むタイプなのは知っていたけど、どうやらスノウ嬢もまた、同じタイプであるらしい。



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模様替えで試行錯誤

ブログ背景が以前からずっと変わらずだったので、たまには違うのにしてみたいと思い立ち、紺色の桜背景から、暖色系の猫背景へと変更してみました。

ブログ側が用意してくれた共有テンプレートに、可愛いのが色々とあるので、どれにするか迷いました。
また気が向いたら模様替えしたいです。

今回は文字を大きくしてみました。もし、もっと小さい方が読みやすいというご意見があれば、また変更します。


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