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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 十二章 1

十二章 『変わるもの、変わらぬもの』




子供のままでいてほしかったのかなあ、と、自分の心情を分析してみる。
意外と、その我が儘に振り回されるのを、僕は楽しんでいたみたいだ。



「まず必要なのは、やる気だ!」

「素晴らしい意見だね」
意気揚々と宣言する長官に、僕はやる気のない疎らな拍手を送る。

「なんだ! そのやる気のなさは!!」

途端に鋭く怒鳴り返される。いつも無駄に元気だよね、この人は。いっそ感心する。

弟であり上司でもあるエクスカイル殿下に睨まれて、軽く肩を竦めてみせる。
ちょっと空気がピリピリする感覚がした。
多分、長官の石化攻撃を防ごうと、僕の周りの精霊たちが、僕を守ってくれたんだろう。
いつもいつもの事で、何が起こっているか想像に難くない。

ついこの間、仕事詰めで倒れたも同然なのに、長官ときたら短気なのも相変わらずでなによりだ。
ヒースにきつい事言われてちょっとは落ち込んでるのかと思ってたんだけど、予想よりかなり復活が早かった。
僕としては、もうちょっと落ち込むなり反発するなりするんじゃないかと期待してたのに、肩透かしを喰らった気分だ。

彼は財務長官の立場だって、なりゆきでなったようなものだったから、飽きればすぐに放り出すと思っていたのに。
未だ「財務長官」であり続け、そして未だに僕を「副官」として、補佐役に置いている。

――――もう、三年。
配属された当初、予想したより長く、そしてまだこの先も、お遊戯は続くらしい。

(お遊戯なんて言ったら、長官は激怒しそうだけど)
子供らしい正義感と溢れんばかりの才能を振りかざし、財務省を我がものにする様は、僕の目からは、彼特有の遊びに見えていた。
それも時が経つ内、彼の真剣さが伝わってきて、自分の楽観を反省させられる事しきりだったが。
……まあそれで、彼なりに真面目なのだと理解したつもりになっていたのだけど。
僕の認識はまだまだ甘かったのだと、この前また、彼の徹底した仕事ぶりを見て反省しなおしたところだ。


腕を組んで反り返って立つ長官に「とりあえず、座ったらどうかな?」と、僕は椅子を勧めてみる。
王子宮の自分の住処に、誰かがやってくるのは珍しい。こうして僕がお茶の準備をするなんて、もっと珍しい。
台所でお湯を湧かして、お茶菓子の用意をする。
彼は甘すぎるお菓子が苦手だから、あっさりしたものにしないと。


立場ある者を無闇に甘やかすな、とはヒースの言。
けれど、指摘された事柄を真摯に改善しようと検討する彼はもう、歳に似合わず、充分大人らしいと思う。
それがとても残念だ。そんな事をヒースに言ったら、すごく怒られそうだけど。


(僕はこの人に、子供のままでいてほしかったのかなあ)
今の自分の心情を冷静に分析してみると、多分そんな感じだ。

彼がきちんとした大人になって、周りを無闇に石化しなくなったら、僕の副官という立場は解任されるだろう。
……僕は、彼に振り回されつつ仕事をするのが、それなりに居心地が良かったのだと自覚する。

だから、僕の存在が不要になる日が少しでも遅ければいいのにと、……彼に子供でい続けてほしいと、勝手に望んでいたらしい。



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