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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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7、日本人の取り柄は勤勉さだ

ルアーム大陸の南西にあるカロロック連合に連なる国の一つ、シッシーナ王国。
そのシッシーナ王国で三番目の規模の街、ジュラ。それが今、私がいる場所。
夏は涼しく冬は穏やかという過ごしやすい気候で、低レベルの魔物しか生息しておらず、非常に暮らしやすい環境で、避暑地としても人気がある。
周囲が低レベルの魔物ばかりだから、初心者冒険者向けという理由で、この地に冒険者養成学校が建てられたそうだ。
国内に養成学校があるのは、この街を含め三箇所。最初からこの街に連れてきてもらえた私は幸運だ。


貨幣はルーグという単位で、多分、1ルーグ=十円くらい。
硬貨は大小二種類の銅貨・銀貨・金貨で構成されていて、その他に別格である聖骸金貨というものもあり、あわせて7種類になる。
紙幣は使われていないが、トロンカードによるネット上の取引が可能なので、硬貨だけとはいえ、お金の持ち運びが嵩張る心配はあまりないようだ。

1ルーグ(小銅貨一枚)=十円。
10ルーグ(大銅貨一枚)=百円。
100ルーグ(小銀貨一枚)=千円。
1000ルーグ(大銀貨一枚)=一万円。
10000ルーグ(小金貨一枚)=十万円。
100000ルーグ(大金貨一枚)=百万円。
100000000ルーグ(聖骸金貨一枚)=十億円。

地球換算してみて、大金貨一枚で百万円相当になるのに驚いた。
まあ、大金貨を使うのは、王侯貴族や大商人といった大金持ちだけで、庶民は大金貨など滅多に使わないとの事。
聖骸金貨など、王族であっても滅多に使わないレアものなのだという。
確かに聖骸金貨は桁外れで、一枚あれば一生遊んで暮らせそうな額だ。


学校は小学校が9年制。この国でも他の国でもここまでは義務教育。
中学校は存在せず、小学校卒業後、すぐに就職する場合を除けば、高等学校、専門学校(冒険者養成学校もここに分類される)、大学のどれかを選択する方式らしい。
小学校で生きてゆくのに必要な最低限の知識は習うので、更に上の学校へ進学する子供は全体で半分以下と、案外低い。
専門職は学校へ行くより直接弟子入りした方が効率がいいようだ。働きながら仕事を覚えて、給料も貰えるから、お金を出して学校へ行くより経済的である。……納得だ。

王都には魔法の専門学校もあるが、この街にはない。代わりに冒険者養成学校で、魔法の扱い方も教えてくれる。
あと、神殿でも決まった曜日に教室を開いてタダで魔法の基礎を教えてくれるので、定住民なら気長に神殿の魔法教室に通って学べば、それも無料で済む仕組みな訳だ。



「キーセ君は勤勉ですね」
二日に一度、勉強を見てくれているクロス教官に感心された。

「それが取り得の民族出身ですので」
「それにしても、たった十日で教科書全部読破するとは思いませんでした」

私が全教科の教科書と辞書を読み終えたからか、感心と呆れが半々といった顔をしている。

元の世界でも、日本人は勤勉で読解力が高いと定評がある。
私はアウトドアが好きだが、読書も好きだ。友人に借りたり図書室を利用したりして、ファンタジー小説とかライトノベルとか漫画とか、よく読んでいた。
必要があるからこそ必死になる分、いつもより覚えも速い。

「まだ学校が始まっていないので、食堂の下働きと自主的な体力づくり以外、本を読むくらいしかやる事がなかったんです」
「寄宿舎に残ってる生徒とボールゲームで遊んだりしていませんでした?」
「ええ、遊びに混ぜてもらってます。反射神経を鍛えるのにいいですよね。それに、学校でどんな授業をするのか聞かせてもらったりと、とても参考になります」

寄宿舎に残っている生徒は、私が異世界人というのを知っても、笑顔で接すれば、普通に笑顔を返してくれる。
「そーいや、近所に異世界人の血を引いてる家族がいるわ」とか、ちらほらと他の異世界人の話も聞けた。本当にこの世界は、異世界から落ちてくる人が多いようだ。

「物怖じしない性格ですね」
「ええ、そうですね」

―――――別に、物怖じしないというのは否定しない。
だが、私は本来、自分から積極的に交友関係を広げようと行動するようなタイプではない。
単に、ここではそうした方が自分にとって有益だから、そのように振舞っているだけだ。

根本的に、私はドライな性格だ。常に頭のどこかで損得を計算している。
心優しい相手には申し訳なく思うけれど、それでもこんな自分を変えようとは思えない。

だからせめて、優しくしてくれた人には精一杯誠実であろうと、……裏切るような真似だけはしないでいようと、自分を戒めている。
真心に真心を返せなくとも、最低限の礼儀を欠くような屑人間にまではなりたくない。



「子供じゃありませんから、知識の詰め込みに問題はありません。教科書は寄贈します。もっと他の本が読める場所はありませんか?」

教科書では基礎知識しか手に入らない。もっと多くの本を読みたい。

「この学校の図書室を使えるように手配しますか。本来なら正式に入学してから利用すべき場所ですが、学長に許可を貰えば問題ないでしょう」
「ありがとうございます」

その提案はとても有難いものだった。冒険者養成学校の図書室なのだから、きっと私が知りたい知識が山とあるはず。楽しみだ。卒業までには網羅したい。
私が期待に胸を膨らませていると、教官がやや心配げな様子で眉を顰めた。

「あまり焦っても身体に毒ですよ?」

……そんなに、余裕がないように見えるのだろうか。私としては、ここでの生活を目一杯楽しんでいるつもりなのだが。

「大丈夫です」

生活補助が受けられる内に自立して稼げるようにならなければと、焦る気持ちは今もある。
だが、この世界について知るにつれて、次第に気持ちは落ち着いてきていた。
本来保護する必要のない異世界人にまで生活支援ができる程、この世界の人々には余裕があるのだ。私だけが急いて焦りすぎても、いい事はない。


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