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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 十一章 4

「エディアローズは元々、自分が倒れたせいでおまえに無理をさせたと気にしていた」
「……逆だろう、それは」
不機嫌な顔のまま、エクスカイルが否定する。
こいつは理不尽な言動ばかりするが、意外なところで、ものの道理がわかっていたりもする。財務長官としての仕事への姿勢も、時に驚くほど真摯だ。

「副官が倒れたせいで長官に負担を掛けたと思うか、倒れるまで副官に無理をさせた長官に非があると思うかは、それぞれ考え方が異なるのだろう。どちらにしろ、仕事量が尋常でなかったのは確かだが」
「仕事を積み上げたクズどもが死ねばいいのに」
本当に毒舌だ。僕も口が悪いと言われるが、こいつに比べればマシだ。
いや……、いくらなんでも比較対象が悪すぎるか。

「財務省の仕事も、おまえ一人で無理をするのではなく、あいつと二人で協力して進めればいい。あいつが望んでいるのは、きっとそういう事だ」
僕の言葉に、エクスカイルは最初怪訝な顔をしたものの、思うところがあったらしく、やや戸惑ったように、小さく頷いた。

――――エクスカイルには、エディアローズとわかりあえる余地があるように見える。
時間が掛かってもいい。ほんの少しずつでもいい。
その関係が良い方へ変わっていけば、と思う。

「僕の弟子が、おまえとエディアローズの仲が良いようだと知って安心していた」
「噂に聞く、女嫌いのおまえが取った女の弟子か。余計な世話だな。この時期なら試験の準備で、他人に構っている暇などないだろうに」
一月には魔術師協会で資格昇級試験がある。
確かに、試験まではあと数日しかない。もし試験を受けるなら、今頃は最終準備をしている時期だ。
僕は既に最高位に達しているから無縁だが、弟子にとっては重要な話だ。
だが今回は、シズヴィッドの試験参加は見送っていたから、それに関しては問題なかった。
「今回は元々試験を見送る予定だったから問題ない。それにあれは、色違いの瞳をまったく怖れない、エディアローズの友人だ」
「ふん、物好きな

ふと、乾いた音がして、僕らは会話を中断して寝室の扉を見る。
「またあの気違いか」
「……だろうな」
「きっと、アルフ兄様からのお見舞いだよ。アルフ兄様は家族思いだから」
また藁人形が嫌がらせの品を持って来たに違いないと顔を顰めるエクスカイルとは逆に、カロンがのほほんと予想する。
嫌がらせが生き甲斐のアルフォンソの行いの数々を、「嫌がらせ」とまるで気づいていないカロンの物言いには、僕もエクスカイルも揃って呆れるしかない。
「頭に花でも咲いているのかおまえは!?」
「え、なーに?」
そうこう言っている内に、黒魔術で動いている藁人形が二体がかりで、エクスカイルの寝室に、ガラス瓶に入った蜂蜜を運び込んでくる。
その琥珀色を見て、エクスカイルが「うがーっ」と叫ぶ。

「あの気違いめ! 僕が甘すぎるものが嫌いだと、一体どこから仕入れてきた!?」

普段、それぞれに割り当てられた区画で離れて暮らしていて、食事を共にする機会もないというのに、好き嫌いまでしっかり把握されている事に、エクスカイルが憮然となる。
こと嫌がらせに関しては、あの凶王子は本当に芸が細かい。この分では末弟のキーリのところにも、何か怪しげな品が届いていそうだ。

「エクス、良かったね。蜂蜜はとっても栄養がある高級品だよ。アルフ兄様、いっぱい働いたエクスにご褒美くださったんだよ」
「うるさいわ!」
あくまでも善意の見舞い品と信じきっているカロンに、エクスカイルが怒鳴りつける。次いで、蜂蜜入りの大瓶を指差して、僕に向かって宣言する。
「おまえ、謝罪に来たというなら、責任持ってこれをどうにかしろ!」
「……甘すぎなければ食べられるのだろう? これを使って、甘すぎない菓子でも作らせる。今度エディアローズに持たせるから、執務中にでも食べるといい」
「この大量の蜂蜜を僕に消費しろと!?」
心底嫌そうな顔で睨んでくる。
蜂蜜はカロンの言う通り、高級品で栄養価が高く、嫌いでさえなければ喜ばれる品なのだ。アルフォンソは本当に、害のない嫌がらせに余念がない。

「こちらで適当に振り分ける。弟子の身内に病弱なのがいるというし、蜂蜜をやれば喜ぶだろう」
「いっそ全部渡してこい!」
「この重そうな瓶を持ち帰ってやるだけでもありがたいと思え」
いくら嫌がらせを兼ねているとはいえ、見舞い品を丸々別の相手に横流しする気にはなれない。
僕は溜息とともに妥協案を出し、蜂蜜の大瓶を持ち上げた。



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