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オリジナル創作ブログです。ジャンルは異世界ファンタジー中心。 放置中で済みません。HNを筧ゆのからAlikaへと変更しました。
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「明日、花が咲くように」 十章 2

「今すぐ書類を片付けろ、愚か者ども!」
「ひえええ!」

仕方なく、他の財務官を数名呼び寄せて、書類を拾わせ分類させる。
不吉眼以外の財務官は役に立たない事この上ないのだが、この際仕方ない。部下に使える人材がいない事実が腹立たしい。
次世代の有能な人材育成はまだか! まだなのか!?

無駄口を叩く気力も失せてきて、黙々と書類をサインし続けていたら、利き腕が腱鞘炎になった。
それでも仕事は溢れるばかりなので、臆病な第四王子に白魔術で手を治療させて、またサインする。その繰り返しだ。
この臆病者が不吉眼に怯えて近寄らないせいで、わざわざ治療にヒースを呼んだのだ。
兄弟が倒れたというのに治療すらせんとは嘆かわしい。この人非人め。

書類は積み上がるばかりで、いくら臆病者に治療させても追いつかなくなってきて、握力もなくなった。
舌打ちして、ペンと手を包帯で縛り付けて固定する。

(この上まだ書類を追加しようものなら、関係者全員石にしてくれるわ!)
ジクジク痛む手を無理やり動かして、段々と不恰好になっていく文字で署名し続ける。最早書いている僕自身が判読不可能な域にきている。流石にこれは拙いかもしれない。

夜中まで机に向かって唸っていると、ふと、執務室の灯かりに影が差した。

「その状態でサインを続ければ、腱鞘炎が悪化するが」
淡々と述べる相手を、僕は苛々と睨みつける。
いっそ石化すればいいのにという気持ちで強く睨むが、これには大抵の術が通用しない。
不吉眼と違って精霊の加護がある訳ではないが、黒魔術で石化を無効化する札でも持ち歩いているのだろう。
「喧しいわ! 仕事を手伝わんなら、偉そうに講釈たれるな! そして何気に小動物に過剰な餌を与えるな!」
いつの間に部屋に入ってきたのか、神出鬼没な気違いの第二王子が、頬袋いっぱいに餌を詰め込んだ小動物を片手に、僕の様子を眺めていた。

凶王子と呼ばれるこの次兄は、仕事もせんとふらふら王宮内を彷徨っている気違いで、親兄弟に嫌がらせするのを生き甲斐とする、はた迷惑な生物である。
これが黒魔術を平然と使うせいで、王宮内には藁人形があちこちに出没する。由々しき事態だ。誰か止めんか。
藁人形もだが、その使役者当人も神出鬼没だ。いつどこに現れるか予想もできん。いっそ幽閉すればいいのに。

「この薬を置いていこう。これは、腱鞘炎を悪化させる薬だ」
「悪化させてどうするっ!?」

「くくくく、ははははっ」

「不気味な笑いを残していくなーーー!  それと小動物は置いていけ、この気違いがっ」



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